春の光が、御簾のすき間からそっと差し込んでいました。
やわらかな風に乗って、桜の花びらが一枚、また一枚と舞い込みます。
その奥に、色とりどりの十二単をまとった小さな女の子が立っていました。
彼女の名は、小野小町。
けれど、この日の小町は、遠い昔の歌人というよりも、春の物語から抜け出してきた小さなお姫さまのようでした。
長い黒髪は光を受けてつややかに流れ、髪飾りには桜の花がやさしく咲いています。
紅、桜色、紫、若草色。
重なり合う衣の色は、まるで春そのものをまとっているようでした。
小町は、こちらに向かって小さな手を差し出します。
「いらっしゃいませ」
そんな声が聞こえてきそうな、やさしく上品な仕草でした。
部屋のそばには、巻物や和歌の紙が置かれています。
そこには、まだ誰にも読まれていない言葉が眠っているようでした。
花のこと。
春のこと。
誰かを待つ気持ちのこと。
小町はきっと、そのひとつひとつを大切に拾い上げて、歌に変えていたのかもしれません。
外の庭には、赤い橋と淡い桜が見えます。
遠くの景色は少しかすんでいて、現実というより、昔話の中の春に近い場所でした。
そこに立つ小さな小町は、華やかなのに騒がしくありません。
かわいらしいのに、どこか静かな品があります。
ただ明るく迎えてくれるだけではなく、見る人の心まで、ふわりと春の中へ招き入れてくれるようでした。
昔の美しい歌人も、最初から遠い存在だったわけではないのかもしれません。
花を見て、風を感じて、誰かを思いながら、そっと言葉を選んでいた一人の人。
このイラストの小町は、そんな遠い時代のやさしさを、かわいい姿で届けてくれます。
桜が舞う部屋の中で、小さな小野小町は今日も微笑みます。
そして、こちらに手を伸ばして、春の物語へ静かに招いてくれるのです。
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