華やかな宮殿の庭に、ひとりの小さな女の子が立っていた。
大きな瞳をきらきらと輝かせ、金色の髪飾りを揺らしながら、こちらへ小さな手を差し出している。
その姿は、まるで遠い昔の物語から抜け出してきた楊貴妃のようだった。
けれど、そこにあるのは近寄りがたい美しさではなく、思わず笑顔になってしまうような可愛らしさだった。
「いらっしゃいませ」
そんな声が聞こえてきそうなほど、彼女の表情はやさしい。
赤や桃色、淡い緑の衣は、春の光を集めたようにふんわりと広がっている。
袖には細かな花模様が描かれ、金の飾りは陽の光を受けて、静かにきらめいていた。
背景には丸い門があり、その向こうには宮殿の庭が広がっている。
牡丹の花が咲き、やわらかな風に花びらが舞い、世界全体が少しだけ夢の中にあるようだった。
楊貴妃といえば、美しさで語られることが多い。
けれど、この小さな楊貴妃は、美しさよりも先に、あたたかさを感じさせてくれる。
誰かを迎えるために笑っている。
遠い宮殿の奥にいる人ではなく、すぐ目の前で「よく来たね」と言ってくれるような存在だった。
豪華な衣装も、きらびやかな髪飾りも、彼女の笑顔の前では少しだけ控えめに見える。
それほどまでに、この小さな手の差し出し方には、人を安心させる力があった。
もし、この宮殿の庭に入ることができたなら、きっと最初に目に入るのは大きな建物ではなく、この子の笑顔だろう。
そして、その笑顔に導かれて、花の咲く道をゆっくり歩いていく。
歴史の中の楊貴妃は、華やかで、どこか儚い存在だった。
でも、このイラストの中の楊貴妃は、悲しみよりも明るさをまとっている。
見る人を楽しませ、迎え入れ、少しだけ日常を華やかにしてくれる。
小さな宮廷の案内人。
そんな言葉が似合う一枚だった。
花びらが舞う庭で、彼女は今日も手を伸ばしている。
そこには、ただ豪華なだけではない、やさしい物語の入口があった。
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