山あいの小さな村に、いげぼという不思議な妖怪が暮らしていました。
頭からすっぽりとかぶった蓑と、手に持った杖が特徴のいげぼ。見た目は少し変わっていますが、その心はとても優しく、旅人を見かけると放っておけない性格でした。
ある晴れた日のこと、いげぼは村へ続く小道の入り口に立っていました。
山から吹いてくる風は心地よく、小川のせせらぎが静かに響いています。木々の間から差し込む光が、いげぼの蓑を金色に輝かせていました。
そこへ、一人の旅人がやってきました。
「おや、こんなところにかわいらしい妖怪がいるぞ」
旅人が声をかけると、いげぼは満面の笑みを浮かべ、両手を広げました。
「いらっしゃいませ!」
まるでお店の看板娘のような元気な声です。
「ここには何があるんだい?」
旅人が尋ねると、いげぼは得意げに村の奥を指さしました。
「きれいなお水も、おいしい山菜もありますよ! ゆっくり休んでいってくださいね!」
どうやら、いげぼは村を訪れる人たちを迎えるのが大好きなようです。
旅人は思わず笑顔になりました。
妖怪と聞くと、怖い姿や不思議な力を思い浮かべる人も多いでしょう。でも、いげぼのように、人を喜ばせることが大好きな妖怪がいても面白いものです。
その日、旅人は村でおいしい食事をいただき、村人たちと楽しい時間を過ごしました。そして帰り際、いげぼに向かって手を振りました。
「また来るよ!」
いげぼは嬉しそうに飛び跳ねながら、もう一度大きな声で叫びました。
「ありがとうございました! また来てくださいね!」
山あいの小道に響く、元気いっぱいの声。
今日もいげぼは、誰かを笑顔にするために、村の入り口で旅人を待っているのでした。
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